ある食事介助の困難な利用者様についてお話します。
仮に、鈴木ふみさんとします。
鈴木ふみさん(仮名)の状態は…
高齢である
嚥下は問題ない
認知症があり気分がころころ変わり、急に怒り出すこともある
びっくりすると怒ってしまう。
耳は聞こえる・目も見える
甘いものが好き
食事の最初は自分で食べることもあるが、すぐに箸をおいてしまう
自歯はほぼない・義歯は使用していない(やわらか食を食べている)
普通に食事介助しようとすると…
機嫌のいい時は食べてくださることもあるが、ニコニコしていても口をつぐんでしまうことも多い。
無理に口元に持っていっても、口を一文字につぐんで開口しない。
無理に介助を続けると、怒ってしまって食べなくなる。
なんとか食事を口に入れてもらっても、手に吐き出してお膳に乗せてしまう。
いろいろ考えて…
びっくりさせない
無理強いしない
楽しい雰囲気を作る
ことを心がけて介助してみようと思い立ち、やってみました。
びっくりさせない
低めの声でゆっくりと呼びかけながら、隣に座る。
その時に、体には触れない。
耳は聞こえており、びっくりすると怒ってしまうので、高齢者が聞き取りやすい低めの声で「すーずきさーん♪」と嬉しそうに声をかけこちらに気づいてもらうのを待つ。
そのとき、かならず笑顔を崩さない。こちらを見ていなくても笑顔!声も笑顔!
「鈴木さん!」と肩を軽くたたいたりすると、びっくりしてしまうので終了してしまう。(自分がまどろんでいるときに、心地よい言葉かけを想像すると簡単かも…)
気づいてもらえたら、まず楽しい話をする。
「おはようございます」「いいお天気ですね」「お兄ちゃんは元気ですか?」など何でもよいがかならず笑顔。
無理強いしない
いろいろお話しながら、会話の切れ目で半開きになっている口に箸で食事を運び、大きく口を開けてもらえるのを待ち、開けてくださったときにのみ中に入れる。
自主的に口を開きやすい環境を作ってから、口を開けていただいて食事を運ぶ。
無理に口の中に入れてしまうと、期限も損ねる上、手に吐き出してしまう。
吐き出し防止と、「私はあなたの味方ですよ」の意味を込めて、手を軽くつないでおくと「出そうかな?」というそぶりの時でも、嚥下できることが多い。(「どうしても出す!」の時は予防になりませんが…)
楽しい雰囲気を作る
常に笑顔を絶やさない。介助者が声を立てて笑うと鈴木さんもつられて笑う。
家族の話や子供のころの話など、楽しく話せる話題を用意する。
鈴木さんが話し始めたら、どんどん膨らませて楽しい雰囲気を増長させる。
その結果…
栄養士の私の顔を見ると笑顔で迎えてくれ、介助を受け入れてくださるようになりました。
でも、コツを掴んで、気持ちに余裕を持てば、誰にでもできますよ。
心構えとして…
忙しい中で、介助を受け入れてくださらない利用者様に「イラッ」とすることはよくあることだと思います。でも、プロとしてお金をいただいていることを忘れず、利用者様が気持ちよく食事ができるように努力してみてください。
しっかりと食べてくださったときの充実感はクセになりますよ^^