腎臓の構造と機能に関する記述である。最も適当なのはどれか。 1 つ選べ。
⑴ 尿細管は、糸球体とボーマン嚢で構成される。
⑵ ヘンレ係蹄は、遠位尿細管と集合管との間に存在する。
⑶ 健常成人の 1 日当たりの糸球体濾過量は、約 1.5 L である。
⑷ クレアチニンは、糸球体で濾過される。
⑸ イヌリンは、尿細管で再吸収される。
解答
⑴ × 尿細管は、糸球体とボーマン嚢で構成される。
尿細管は、ネフロンの一部であり、ボーマン嚢から始まり、近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管、集合管で構成される。糸球体は、ボーマン嚢の内部に存在する毛細血管の塊であり、尿細管とは区別される。
⑵ × ヘンレ係蹄は、遠位尿細管と集合管との間に存在する。
ヘンレ係蹄は、近位尿細管と遠位尿細管の間に存在する。ヘンレ係蹄は、髄質深部まで下行し、再び皮質に向かって上行する。ヘンレ係蹄は、尿の濃縮に重要な役割を果たす。
⑶ × 健常成人の1日当たりの糸球体濾過量は、約1.5Lである。
健常成人の1日当たりの糸球体濾過量は、約150Lである。糸球体では、大量の原尿が濾過されるが、尿細管での再吸収により、尿量は1日当たり約1.5Lに調節される。すなわち、99%は再吸収されている。
⑷ 〇 クレアチニンは、糸球体で濾過される。
クレアチニンは、筋肉の代謝産物であり、主に糸球体で濾過される。クレアチニンは、尿細管での再吸収や分泌をほとんど受けないため、腎機能の評価に有用であり、糸球体濾過量(GFR)の指標として用いられる。
⑸ × イヌリンは、尿細管で再吸収される。
イヌリンは、糸球体で濾過されるが、尿細管では再吸収も分泌も受けない。したがって、イヌリンクリアランスは、糸球体濾過量(GFR)の測定に用いられる。イヌリンは、外因性の物質であり、体内で代謝されることなく、尿中に排泄される。
糸球体濾過量(GFR)を求める国際的な基準法は、尿細管で再吸収も分泌もされない物質であるイヌリンによるイヌリンクリアランスが用いられる。しかし測定にはイヌリンの持続静注が必要であり、一般臨床では実施は困難であることから、尿中クレアチニン排泄量を24時間蓄尿することで得られるクレアチニンクリアランスが近似値として用いられてきた。しかし24時間蓄尿は負担が大きく、近年はより簡便で日常診療に利用しやすい血清クレアチニン値、年齢、性別から算出する推算GFR(estimated GFR;eGFR)が主に用いられている。